大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和34年(あ)1049号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人木下及び同小久保の平等負担とする。

理由

被告人木下只見雄、同小久保操の弁護人酒井雄介の上告趣意は量刑不当又は事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人木下卓、同香山和弘の弁護人三浦寅之助の上告趣意第一点は事実誤認、第二点は単なる法令違反、第三点は量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(関税法違反または物品税法違反の如き国税犯則事件についての税関長または収税官吏等の告発は単に該違反罪に対する訴追条件にすぎないと同時に、司法警察員は犯罪があると思料するときは犯人および証拠を捜査するものとせられ、検察官は必要と認めるときは自ら犯罪を捜査することができ、しかも捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができ、法律の定めに従い強制の処分をすることもできるのであるから、該違反罪につき税関長等の告発前においても被疑者を逮捕、勾留し、取り調べることができるのであって、その逮捕、勾留または取調が右の告発前になされたからといって、ただそれだけの理由でこれを違法とすべきものではなく、所論の点についての原判示は正当である。なおまた被告人木曽の司法警察員及び検察官に対する供述調書につき、その供述の任意性を疑わせるに足るような事由は少しも認められない。)

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、被告人木下及び同小久保に対し更に一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例